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陽だまりInterview
「ローカルの自然食材を主役にした料理を、アートのように楽しんでほしい」

ジェイミー・ケネディさん Jamie Kennedy

トロントを中心に活躍してきたカリスマシェフ。地産地消する食文化の大切さを提唱し続けてきた彼は今、ナイアガラの国際的レストランで「カナダ料理」の監修を行う一方、田舎の農場をベースに、新しい形の食「アート」を提案しようとしています。

ジェイミー・ケネディさん Jamie Kennedy

トロントの大学で料理プログラムを履修後、2年間ヨーロッパで修業。帰国後、オーガニック食材を使ったカナダ料理を提唱し、トロントで数々の伝説的レストランを運営。現在はナイアガラのレストランでエグゼクティブシェフを務める一方、オンタリオ州の田舎の農場でスローライフを満喫。その食文化への貢献により「総督賞」、「カナダ勲章」などを国家的な表彰を受けているカナダ料理界の第一人者。

http://www.jamiekennedy.ca/

地元食材にこだわり、アートとしての料理を追及したい

― カナダを代表するシェフとして広く知られるジェイミーさんですが、最初に料理の世界を目指されたきっかけはなんだったのでしょう。

Jamie(以下J)昔からアートやカルチャーが好きで、料理はその中のひとつとしてとても興味がありました。しかも食材の生産者がいて、食べる人がいて、その間に作る人がいる。生活に密着したいろいろな人がかかわるアートというわけで、とてもチャレンジングでやりがいがある。ぜひこれを追求してみたいと思ったのです。

キッチンにはナイアガラで採れたばかりの様々な野菜が並ぶ

ダックコンフィ、リンゴとブルーベリーソース。鴨はもちろん、ソースの素材や付け合せ野菜も、すべてナイアガラ産 チョコレートとアイスクリーム、オレンジクリスプのデザート

― 料理には地元の食材を使うことをポリシーとされ、今カナダでも注目されている地産地消の文化を広めた一人といえます。

J料理とはもともと、その時々に近くで入手できる食材を、いかにおいしくアレンジするかというところから始まっているはず。それが、ある頃から便利さやビジネス面ばかりに偏り、地域性や季節性といった本来あるべきものが見失われてしまいました。特に北米ではその傾向が顕著です。これはとても残念なこと。たとえばカナダなら、長い冬があり、短い春、そして夏がある。畑の作物が育つのは主に6〜8月の3ヶ月。この時期に地元の素晴らしい食材をたくさん食べ、そして保存食を作って冬に備える。そんな、昔ながらの食文化というか、旬のものを食べる、天候や風土に合ったものを食べる、という当たり前のことをより多くの人に楽しんでほしいのです。

― 食材は農家から直接仕入れることも多いようですね。

Jファーマーやワインメーカーは、こだわりを持ってより良いものを作ろうとする「フード・アーティザン」(食材の職人)だと思います。ローカルコミュニティの中で彼らと交流し、情報を交換しながら美味しい食材を供給してもらい、敬意を払って料理をする。お互いに顔を見て話し、尊重し刺激しあうことで、その地域の農業も活性化し、さらにおいしいものが作られる。食文化を大きなアートとしてとらえるなら、それが理想的な形ではないでしょうか。

― 現在はナイアガラの滝の前にあるホテル内の「ウィンドウズ・バイ・ジェイミー・ケネディ」というレストランでエグゼクティブシェフとして料理の監修をされていますが、ここの料理にもそのコンセプトは活かされていますか。

Jはい。ナイアガラは、カナダ有数の農業地帯で、野菜から果物、肉類など食材のほとんどは地元で仕入れることができる素晴らしい場所です。「ウィンドウズ」で出す料理は、そうした地元の食材を最大限に生かした「ナイアガラ・キュイジーヌ」です。最近では、ワイン産地としても注目されており、料理とのペアリングで美味しいローカルワインも提供できます。観光客が非常に多い場所ですから、世界から訪れた方たちにそんなナイアガラの魅力を知っていただける店になればいいな、と思っています。

キッチンでは、無駄なく素早く、踊るように料理を楽しむ姿が

プリンス・エドワード・カウンティにあるジェイミーさんの農場。ここでブドウや野菜、馬や牛も育てている

新たな試みは、ゆっくり過ごせる田舎から

― 数年前、オンタリオ州のプリンス・エドワード・カウンティ(PEC)という田舎に農場を買われ、生活拠点もトロントからそちらに移されたそうですが。

J当時は忙しすぎました。自分の料理へのパッションを維持するために、いろいろなことをスローダウンしてリラックスする必要があったのです。PECは、トロントから車で2時間ほど、オンタリオ湖畔にある静かで平和な場所です。ナイアガラと同様、農業が大変盛んで、ワイナリーもたくさんあります。2007年にここの農場を手に入れました。ここで自分のブドウ畑からワインを造り、畑で野菜を育てる。子供たちのためにもそんな生活をしたかったんです。PECで暮らしてもう何年にもなり、ずいぶん落ち着きました。

― 以前、トロントで広く展開されていたレストランもほぼクローズされ、今はPECでの農場生活を中心に、ナイアガラの店の監修や、フードイベントの企画や参加などをされているようですが、これから新たに何かを始められる予定は?

J今年の夏には、自分の農場でスペシャルディナーを提供しようと思っています。夏の間の週末のみ、人数も限定のイベント的なディナーです。自分の畑や、地元の農家で採れたばかりの野菜などを使い、限られたゲストのために自分のイメージ通りの料理をする。農場にある納屋を改装して、素朴なダイニングルームにする予定です。ゲストは農場でのんびり過ごして食事を楽しむ。スペシャルゲストとして、地元のワインメーカーやファーマーを呼んでも面白いかもしれません。PECのような条件のいい田舎だからこそできる贅沢なこころみです。以前からっとやってみたかったことがようやく実現できそうです。機会があれば、日本の方にも体験していただきたいですね。ぜひいらしてください。

農場でのどかなひと時を楽しむジェイミーさん 旬食材を冬用に保存するのもジェイミーさんの得意技

ナイアガラの目の前、シェラトン・オン・ザ・フォールズ・ホテルの中にある「ウィンドウズ・バイ・ジェイミー・ケネディ」