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貴重な地球遺産
カナディアン・ロッキーの氷河
世界遺産カナディアン・ロッキーの高峰からゆっくりと流れ出す氷河。
その巨大な氷の塊が、今急速に起こっている地球の変化を、ありありと伝えてくれます。

極北の空に現れる、輝くカーテン

 カナダ北西部、アラスカの隣に広がるユーコン準州。日本の約1.3倍の広さを持つこの土地のほとんどは手つかずの大自然地帯で、氷河を抱いた山岳地帯やツンドラの原野がどこまでも続いています。人口は約3万人にすぎず、主役はクマやカリブーなどの野生動物。自然あふれるカナダの中にあっても、別格のネイチャーワールドというべき場所です。
 冬の夜、この北の果てに広がる空には、不思議な光「オーロラ」が現れます。時にはブルーグリーン、時にはピンクがかった白、時には赤…。ネオンのようにカラフルに輝く光が、空いっぱい波打つように踊ったり、シフォンのカーテンのように優雅に揺れたり、あるいは天空から放射状に降り注いだり。色も形も、動き方もその都度異なり、とにかく不思議としか言いようがありません。
 時には「オーロラブレイクアップ」と呼ばれる、空が破れたかのように1点から一気に光がはじける現象が起きることもあります。そんな場面に遭遇すると、あまりの驚きに言葉を失い、空を見上げて立ちすくむばかり。実際に目の当たりにしているのに現実感がなく、まるで大きな幻を見ているかのよう。他では体験することができない、衝撃的な感動に包まれます。

道路を横断するカリブー。ここでは動物たちが主役です 真っ白な被毛にくるまれたマウンテンゴートの姿も

太陽から贈られた神秘の光

ごく稀に、真っ赤なオーロラが出ることも

 オーロラとは、太陽から放たれたプラズマ(電気を帯びた粒子)が、地球の磁力に引き寄せられて大気圏に突入し、酸素や窒素とぶつかって発光する現象といわれています。まさに、太陽からの美しい贈り物といったところでしょうか。地上100㎞から500㎞くらいの空気層の中で発光しており、カーテンのように立体的に見えるのはこのためです。また光は、南北の磁極を中心に地球に王冠をかぶせたような状態で現れ、とくに南北の緯度60〜70度あたりに頻繁に発生します。この、よくオーロラが出現する環状地帯をオーロラベルトといいます。
 ユーコン準州は、オーロラベルトの真下に位置しています。つまり、オーロラを見るのに絶好の場所というわけです。位置的な条件の良さに加え、夜、人工的な明かりが届かない場所が多いのもメリット。このため州都のホワイトホースからは、様々なタイプのオーロラ鑑賞ツアーが出ています。暗闇の中、雪景色の原野で待機したり、人里離れたB&Bやロッジに泊まって、一晩中気長に光を待ったり、お好みのスタイルで楽しめます。

 観測のベストシーズンは、冬。太陽活動に連動して起きるオーロラは一年中発生していますが、肉眼で確認するには、空が十分に暗く夜が長いこの季節が理想的です。もちろん、極北のユーコンでは冬の夜が大変長いため、遭遇率はかなり高く、3~4日ほど滞在すれば、たいてい見られるともいわれています。この時期、気温はマイナス20℃、30℃となることも珍しくありませんが、そんな凍てつく空気を通して見上げる光の美しさは格別です。
 夜、銀色に浮かび上がる雪山と、鮮やかなオーロラのコラボレーション。そんな壮大な光景が見られるのも、この地ならではの魅力です。

原野にティーピー(先住民のテント)を張って光を鑑賞 一軒宿のB&Bに滞在すれば、夜通し光を眺められます

雪景色の原野で迫力のアウトドアライフ

 冬のユーコンの楽しみは、もちろんオーロラだけではありません。ここには、大自然地帯ならではのダイナミックなアウトドア体験も満載です。
 たとえば、静かな森の中を散歩感覚で楽しめるスノーシュー。たっぷりと降り積もった雪の上を、フカフカと浮かぶように歩いたり、飛んだり跳ねたり、走ったり。童心に戻り、雪まみれになって遊んでみては。ウサギやキツネなど小動物の足跡もあちこちで発見でき、実際にその小さな姿を見かけることも少なくありません。
 また、ホワイトホースの近くにはスキー場もあり、絶景の中を楽しめるクロスカントリースキーのコースも充実しています。上級者ならガイドと共にダイナミックな山岳地帯に行き、バックカントリースキーに挑戦することもできます。

まっさらな雪の上でスノーシュー クロスカントリーからバックカントリーまで、迫力のスキー体験 スノーモビルでの大自然ツーリングも人気 凍った湖に穴をあけ、アイスフィッシングも ホワイトホース近郊には公共温泉もあります

北国ならではの特別な体験、犬ゾリ

 動物ファンの方なら、犬ゾリも見逃せません。もともとは、カナダやアラスカの先住民が、冬場に狩りをするときなどに雪上の移動手段として使ったのが始まりと言われています。ユーコンでは、今もソリ用のドッグチームをトレーニングしている専門家が多く、旅行者のアトラクションとしても人気があります。数頭の犬をつなげたソリに乗り、ドッグチームを誘導しながら進みます。力強い犬たちに引かれ雪原から森の中へと駆け抜けるのは、とびきりの気持ちよさ。ソリに座るだけでなく、ソリの後ろに立ってマッシャー(操縦者)の体験をすることも可能です。
 ちなみにユーコンでは犬ゾリレースも盛んに行われており、中でも2月上旬に行われる「ユーコンクエスト」は世界的に有名。これは、ホワイトホースとアラスカのフェアバンクスの間、約1600㎞の雪原を10日以上かけて走破するという過酷なレース。近年、日本の女性マッシャーが完走したことでも注目されています。この大会にタイミングを合わせて訪れるのも、面白そうです。

ドッグチームと共に真っ白な世界を疾走 元気で人懐っこいソリ犬たちに思わず癒されます

先住民の知恵に触れ、オーロラの感動を共有

 あるいは、先住民の文化を体験してみるのもおすすめです。ユーコンには8つの先住民グループがあり、彼らの文化や伝統を紹介する施設も各地にあります。こうした場所で、自然と共存してきた人々の知恵に触れてみては。ドリームキャッチャーなどのクラフト作りを楽しんだり、カリブーやホッキョクイワナを使った伝統料理を味わったりと、様々なプログラムが用意されています。
 それぞれの先住民部族に伝わるオーロラ伝説を聞いてみるのもいいかもしれません。たとえばオーロラは空にできた大河と信じられていたり、あるいは天空に住む人々が玉けりをして遊んでいると信じられていたりと、様々なストーリーが残されています。いずれも不思議な光に対する畏怖の念が込められており、今も昔も、オーロラを見たときの人々の驚きは同じなのだと、実感させられることでしょう。

自然と共に生きてきた先住民の文化を体験 各地に先住民文化を紹介するカルチャーセンターも

 神秘的なオーロラとの遭遇、そして白銀世界で楽しむアウトドアや先住民文化。それは日本ではできない、カナダ極北地方ならではの体験です。北の果てユーコンで、こんな特別な冬を極めてみませんか。

鮮やかな光が波打つように広がり、空を埋め尽くすことも

Text: Hiroko Yoshizawa Photo: Government of Yukon/Robert Postma, Cathie Archbould, F Mueller, Bruce Barrett, J Kennedy